秀808の平凡日誌

第4話 閃光

第4話 閃光


 古都ブルンネンシュティグへ帰る道の中、アシャーは言った。

「あのファントムは、私の持っているこの書物を狙っているのです」

 懐の道具袋から、一冊の意味不明な文字で書かれた本ととりだし、ヴァン達に見せた。

「なんだ?この文字・・・?」

「それは、天界語で書かれています・・・要は、天界語の翻訳書ですかね」

 そして再びそれを道具袋へ戻すアシャー。

「奴は、旧レッドアイ研究所にある隠し階層にある資料を解読し、天界語で書かれた部分が読めなかったのでしょう。だから私のところにきたのです」

「へぇ・・・その翻訳書とやらを使って、『REDSTONE』のありかを探し出す気か?」

「いえ、奴はすでに『REDSTONE』を持っています。」

 アシャーの言った言葉の意味をヴァン達が理解するのに、いくつかの時間を要した。

 ラムサスが慌てた口調で言う。

「ま、待てよ。そいつが持っているってんなら、なんで天使達に渡さないんだ?渡せば、英雄と同じような扱いをうけられるし、平和にだってなるんだぞ?」

「世界がこんなになった理由は、何も『REDSTONE』が落ちて時間が立った・・・というわけではないのです。」

 その言葉に意味を悟ったのか、ロレッタが恐る恐る聞く。

「・・・それは、どういうこと?」

「落ちて時間が立っただけでは、こんなにも地上の怪物達は凶暴化しません。なるとしても、せいぜい気が荒くなるだけで、古都の近くのコボルトが集団で人を襲うようにはなりません・・・となれば・・・」

「まさか、あのファントムって奴のせいだっていうのか?」

「・・・それしか、考えられません。研究所には、天使達から色々と元素に関する資料が行き渡っているはずです。それが残っているとなると、どうすれば地上の怪物達が凶暴化する・・・なんてことは、簡単なことなんです。」

 ラムサスが侮蔑を交えた口調でつぶやく

「・・・おんなじウィザードでも、これほど違うってか・・・」

「ラムサス、このことを王に報告しよう、そうすれば・・・!」

 言い終ろうとしたその時、ヴァンは密かに熱気を感じた。

 そして、咄嗟にこう叫んだ。

「みんな!横に飛べ!!!!」

 ヴァンに言われた通りに横っ飛びに転がった。

 すると、今までヴァン達のたっていた所に、巨大な隕石がすさまじい速さで落下し、大爆発を引き起こした。

「・・・これは・・・『メテオシャワー』!?誰が・・・」

 撃った犯人を探していると、空から笑い声が聞こえた。

「・・・フハハハハハハ!!また会ったな!アシャー!」

「!!ファントム!!」

 空を見上げると、こちらからは決して攻撃のとどかないようなところに、『レビテイト』の効果なのかわからないが、ファントムが浮かんでいた。

「さっき私に傷をつけた罪・・・償っておらおうかな?・・・もちろん『死』でな」

 言い終わると同時に、近くの茂みから、森から、次々と『ティンバーマン』と『ウルフ』が続々と現れる。

 ざっと、50匹は越している。

 ・・・誰もが、激戦を予想せずにはいられなかった。



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